九州に目を向け活躍するベンチャーキャピタリストにインタビュー シリーズ第2弾!
サイバーエージェント・ベンチャーズ ヴァイス・プレジデント 白川 智樹氏インタビュー
平成28年3月8日
Q サイバーエージェント・ベンチャーズ(以下「CAV」)の紹介をお願いします。
白川氏(以下S)
アジアを中心とした8か国11都市、インターネット関連のシードステージのベンチャー企業に投資しているベンチャーキャピタルです。
国はアメリカ、中国、韓国、台湾、ベトナム、タイ、インドネシア、日本となります。出張ベースではなく、各拠点にメンバーが常駐していることが特徴です。
東南アジアのベンチャー企業にご出資をするにあたって、我々はマーケットになるような都市でしっかりと根を張ってネットワークを作っていくということを考えて展開しています。
サイバーエージェントと名前がついていると、事業会社系の投資会社とみられがちです所謂独立系のベンチャーキャピタルや金融系のベンチャーキャピタルと同じく、ベンチャーキャピタルという事業をやるためのベンチャーキャピタルになります。
サイバーエージェントがやっている事業分野であっても、情熱を持ち、その事業をやるのに適した方であればご出資させて頂いています。
Q 投資分野としてはIT分野とのことですが、具体的には?
S
インターネット関連が中心にはなりますが、ハードウェアが関わるIoT分野なども投資させて頂いています。
そのときどきに伸びてくる分野があるので、あらかじめ決めていませんが、国内外でどんどん出てくる事業の種を見逃さないよう、キャッチアップすることを大事にしています。メンバーが国内で5人くらいいるのですが、特に担当分野というようなものを決めずに柔軟に活動をしています。
Q 投資するステージはどういった段階が多いですか?
S
大きく分けると、2つあって、まったくのシードで、プロダクトもあるかないかの段階で5百~1千万円を即決でご出資するパターンと、ある程度事業が伸びてきているステージ、または、事業のバックグラウンドがある方が独立される場合などに2千万円~5千万円をご出資するパターンがあります。いずれにしろ事業のタイミングやKPIの状況などによって提案させて頂いています。
Q 基本的にはシードが多いのですか?
S
シードが中心です。初回に数千万円の投資を必要とするベンチャーの場合は他のVCさんやアクセラレーターさんなどと一緒にご出資するということもあります。
追加出資では1社あたり総額1億円を上限としています。おそらく多くのベンチャー企業さんは足りないと思うので、我々以外の投資家の方との接点を作らせていただいて、お引き合わせしています。
Q 起業するときはまずはCAVさんに相談するとよさそうですね。
S
クラウドワークスさんは、吉田社長がー事業案を検討されているところに、当社の代表の田島が「クラウドソーシング事業はいかがですか」とご提案させて頂きました。
Q それは驚きです。
S
やりたい事業が決まっている方にお会いすることも多いですが、独立するときに、どういったテーマで独立しようかといった相談もあったりしますし、例えばSEOが強い方にはこういった事業がいいのではとか。そういったご提案ができるように日々精進しています。
Q サイバーエージェントさんという名前を冠しているので、1億円くらいの調達からじゃないと相手にしてもらえないのではと想像してしまいがちですが、こうして話を聞くとぜんぜん違いますね。
S
朝会みたいなことをさせて頂いていて、週2回くらい7時半くらいから、フラットにお話ししましょうみたいなこともやっています。僕らとしてはふらっと寄って頂けるようにしたいと思っています。
Q 白川さん自身のことも教えていただいてよろしいでしょうか?
S
僕自身は3年前にCAVに入って、現在は14社お手伝いしています。その前はサイバーエージェントでゲームの事業をやっていました。ソーシャルゲームが伸びるタイミングだったので、僕自身挑戦させて頂くことが多くて、80人くらい、3プロジェクトの責任者をさせて頂いていました。その後自分でベンチャーをやるために違う道をと考えていた時に、CAV代表の田島から一緒にやろうよと声を掛けられて、今に至るという感じです。
もともとVCを知らなかったんですよね。自分の選択肢が起業家だけだと思っていた時に、主役ではなくても10~20の企業のお手伝いができて、10~20の世の中を変えられるビジネスをお手伝いできるということは、欲張りな仕事だと思って今VCにいるというのが原点ですね。
起業家としては自分のビジネスの邪魔をされたくないという気持ちも分かるのでまずお邪魔にならないということと、起業家も万能ではないので何か困っていることがあればお手伝いしていければと思っています。
Q 投資先にはどういった支援をされていますか?
S
会社によって全く異なるのですが、例えばある会社さんの場合は、最初から事業をお手伝いするようなイメージで意思決定に必要な情報を集めたり、経営合宿に参加させて頂いたり、というケースもあります。一方、例えばもともと私はゲームのバックグラウンドだからといって、ゲームクリエーターの方々に対して、ゲームが面白いとか面白くないというのは差し出がましいので、そういう方々にはゲームの制作に必要な資金調達のお手伝いをするなど部分的なお手伝いもあります。また、法人向けのサービスをしているご支援先企業が、大企業に自社サービスをご提案したいという場合は、CAVのネットワークからご紹介を心掛けています。
会社が大きくなったときに、CAVに手伝ってもらったのがよかったと言って頂けるようなご支援をしたいと思っています
Q 福岡についてどのように見ていますか?
S
半年に1回くらい伺っていますが、どんどん起業家が増えていると感じますね。天神COLORの安達さんとかトーマツの香月さんなどハブになっている方に紹介をお願いすると、存じ上げない起業家の方をを毎回紹介して頂けて、一番伸びている地域だなと感じています。
福岡市長をはじめとして街として応援しようという雰囲気が高まり、シェアオフィスが増えていることなどからもわかるように、全体として後押しがあることで、チャレンジする人が増えているのだろうなと感じています。
また、福岡の特徴として、すでに手堅く稼いでいる企業が多いと思います。IT系もそうですし、IT系出身でなくてもクリーニングをしていました、不動産をしていましたというところからのIT化にチャレンジしている起業家の方もいて、地に足のついた商売っ気のあるところが優れているところかなと思っています。
その中でいかにトップラインを目指していくかというのがポイントだと思いますし、その中からスターのような企業が増えるると、そこを目指したいという方がどんどん増えていくような雰囲気なのではないかなと思っています。
Q 福岡が本物になるため、伸びるベンチャーがでてくるために必要なものとは?
S
StartupGoGoのイベントで高島市長も仰っていましたが、目標となるベンチャーが増えることだと思います。メルカリの山田社長とお仕事をされていたご支援先の社長の方が、メルカリさんの成長を見て悔しいと仰っていて、そんな感じかなと思うんですよね。切磋琢磨していた人があんなにうまくいって悔しい、だからもっと頑張るというような感じだと思います。
Q CAVさんとしては今後の九州への投資は?
S
地域がどこであるかというのは関係なく、日本全国のすばらしい起業家の方をご支援したいと思っています。福岡ではCAVからニューワールドさんにもご出資しています。起業家の方が増えている地域なので、2~3か月に1回は福岡に訪問しています。今後も我々としては福岡のスタートアップにより積極的に関わっていきたいと思っています。
Q 投資先は近い方がいいと言われていますが?
S
会う頻度が高ければそれだけ信頼関係が構築しやすいということだと思います。逆に言うとお互い信頼しあっていれば問題ないとも言えます。
事業によってどの都市が有利かというのはあるかもしれないので、福岡の方が有利という事業というのもあると思います。
Q サイバーエージェントグループとの連携メリットはありますか?
S
サイバーエージェントは事業部が強く、各事業部がしっかりとそれぞれの目標に向かって動く会社です。CAVがご出資させて頂いたからといってアメーバが集客してくれたり、営業してくれたりということはないのですが、各事業部にとってもメリットがあるのであれば、ピンポイントでライトパーソンのご紹介はできます。 また、海外展開をする際のときに足がかりになることはできるかもしれません。CAVとして各国の起業家の方、投資家の方、メディアの方などに接点を持たせて頂いて、現地のネットワークに入りこんでいます。ベトナムとインドネシアにはシェアオフィスがあるので物理的なご支援もできます。
また、最近はインテリジェンスさんと一緒に採用のお手伝いも始めています。採用に関してはどのタイミングの企業さんでも困っているようなことでもあるので、柔軟な支援を行っています。
CAVが投資先に格安で提供するワーキングスペースSTARTUP BaseCamp
関連URLサイバーエージェントベンチャーズ 白川氏紹介ページ
https://www.cyberagentventures.com/team/