スタートアップが事業をスケールさせていくためには、リスクマネーを供給してくれるベンチャーキャピタルという存在が重要です。しかし、彼らは黒子役としてあまり表には出てはきません。資金を調達したいスタートアップにとっても彼らがどんな人たちで、どういう考えで投資をし、どういった支援をしてくれるのかを知る機会があまりないのが実情ではないでしょうか。このインタビューシリーズでは、九州に目を向け活躍するベンチャーキャピタリストにインタビューし、その姿を追いかけていきます!
グロービス・キャピタル・パートナーズ プリンシパル 東 明宏氏インタビュー
平成28年3月8日
Q まずはグロービス・キャピタル・パートナーズさんと東さんのご紹介をお願いします。
東氏(以下、H)
グロービス・キャピタル・パートナーズは、設立されてから、今年でちょうど20年になります。いままで5つファンドを設立していて、そこからベンチャー企業に投資をしてきました。最新のファンドは今年の1月に組成されたばかりになります。はじめのファンド以外は100億円以上のファンドの規模で、日本の独立系のファンドの中では比較的大きい部類に入ると思います。
特徴としては設立当初から日本初のハンズオン投資をするファンドだということでやらせていただいています。。投資をすると基本的に投資先に取締役で入って支援をさせてもらっています。これまで30社程度上場しており、最近はM&Aも増えてきています。領域としてはITに関連する領域(BtoB,BtoCともに)がターゲットです。
私は、2012年にグロービスに入りました。その前は事業会社を2社経験しています。1社目はセプテーニというネット広告代理店の会社で営業、営業企画、新規事業の開発、子会社の役員などをしていました。その後グリーに転職しました。グリーでは経営企画と新規事業の立ち上げを担当しました。
新規事業はそれまで内製ゲームしか配信していなかったところを、グリープラットフォーム上で他社のゲームを配信するというものでした。そこで他のゲーム会社の立ち上げを支援するということをさせていただいていました。その過程でゲーム会社にも投資をするということも経験しました。10社程度投資して3社上場しています。
そこをベンチャー投資の入り口にして、今はそれを本業にしています。現在、社外取締役をしている会社が4社で、サブでサポートしているのが3社で合計7社をご支援させていただいています。
Q グロービスとしてはどのフェーズに投資するか?
H
投資金額の目安を1億円にさせてもらっています。フェーズはアーリーからレイターまで幅広く投資をさせてもらっています。我々は人数がそんなに多くなく、会社として投資先にがっつりと支援をするというスタイルなので、あまり社数を増やすというよりは、1社1社しっかりとお付き合いをさせていただいてくようなスタイルでやっています。
Q VC業界に入った経緯は?
H
前職の時の経験で2010年くらいにソーシャルゲームの盛り上がりがあり、当事者としてやらしてもらっていたのですが、2~3人で始めた会社が百人くらいになって売り上げを上げて上場していくというのを間近で見ていました。
小さな会社が急拡大するのは気持ちのいいもので、横で見ているのは楽しいものでした。もちろん辛いこともあるのですが、世の中に存在しなかったものが1となり100になっていくのは見ていて楽しかった。それを本業にできる仕事があると知ってVC業界に転じました。
Q ハンズオンが特徴とのことですが、具体的にはどのような支援になりますか?
H
1社ごとに違うので難しいのですが、会社のニーズに合わせてご支援させてもらっています。代表的な支援を「3R」と言っていて、HR、PR、IRの支援をしています。HRは、ベンチャーは人がすべてであると言っても過言ではないので、採用や組織開発の支援などをしています。PRはベンチャーは、サービスが知られないというのは無いものと同じなので、ちゃんと世の中に伝えていくというところの設計や、伝える舞台の用意などをご支援しています。IRは投資後、IPOをやるぞというステージになった時に、これまでの上場経験をもとに、アドバイスをしています。IPOのトラックレコードは30社程度あり、そこで得たナレッジのフィードバックとうことですね。
Q プライベートなことや起業家の心のケアなどまでやったりするのですか?
H
社長はなかなか人に言えないことを抱えていることもあるので、そういう話を相談してもらえるようなコミュニケーションができていればいいなと思っています。
Q ご自身が福岡出身でもあり、九州担当ということもありますが、福岡をどのように見ていますか?
H
ホープを担当させてもらった2013年から福岡に訪問していますが、非常に変わってきたなと思っています。盛り上げていこうということで、いろんな人が舞台づくりを積極的にやられてきたのだと思っています。いろんな方が舞台の立ち上げを行って、たくさんの方が起業をするというフェーズは、成功裡に終わり、そこは抜けたなと認識していて、そこから事業を大きくしていこうという人が出てきているのが、最近の状況だと思っています。
いろんな人に聞いても東京の次にどこを注目しているかと聞くと福岡と答える人が多い。注目だけではなく、実態を伴ったものに変わってきている。賑やかしで終わるブーム的なものから変わってきたなと思っています。実感として年々ピッチ大会などのレベルも上がってきているとすごく感じます。何がよかったのか?ほかの地域でも盛り上げようとしているが、福岡のようにうまくはいっていなくて、うまくいっている秘訣を逆に聞きたいくらいです。
Q 1年前だと「盛り上がっていますね」といわれると、「まだお祭り騒ぎをしているだけですよ」、と答えていましたが、確かに最近はちゃんとサービスをローンチしてVCから資金調達をしている状況にはなってきていますね。
H
スタートアップGo!Go!に一緒に参加したベンチャーユナイテッドの丸山さんなどは、すでに2社投資していますね。
単なるブームという段階は過ぎているということだと思いますね。
Q 福岡というエリアに注目しているので、グロービス以外のVCの中にはとりあえず福岡のスタートアップに投資しておこうということというディールもあると思いますか?
H
いえ、VCとしてはエリアで投資は決めることはないので、最近の福岡のスタートアップが資金調達に成功しているということはその企業が純粋に魅力的だからだと思います。ただ、米国のVCなどは歩いていけるくらいのところのベンチャーに投資したいといいますよね。空港が近くて日帰りが可能とは言え、それでも距離のハードルを乗り越えて在京のVCが投資するということはそれだけ福岡のスタートアップに魅力があるということだと思います。
ただ、もちろん福岡の街は魅力的ですね笑。
Q さらに次のステージに福岡がいくために必要な要素は?
H
福岡の九州の起業家の人たちがベンチマークにするような企業が現れることで変わると思っていて、自分の仕事として貢献したいなと思っています。そうするとエコシステムがさらに強くなると思っています。一個一個、積み上げてきたので、今ファンディングしている人たちの中からそれを生み出すということだと思っています。
関連URL グロービス・キャピタル・パートナーズ 東 明宏氏紹介ページ
http://www.globiscapital.co.jp/team/higashi.html