コカ・コーラウエストとそのグループ会社キューサイが、CQベンチャーズ株式会社2016年2月29日付けで設立し、5月9日から投資業務を開始した。今回はCQベンチャーズ社長の島原氏にCVC設立の狙いと投資先について聞いてきた。
CQベンチャーズ株式会社代表取締役社長 島原 芳紹氏
5月30日
Q:今回のCVC設立の目的は?
島原氏(以下S)コカ・コーラウエストグループには大きく分けて二つの事業があります。飲料事業とヘルスケア・スキンケア事業です。とりわけキューサイが担っているヘルスケア・スキンケア事業は、近年競争環境が厳しくなっており、研究開発が単独ではなかなか難しくなってきています。このような状況下で、社内では、外部から積極的に知識、技術、ノウハウ等を導入した方がよいのではないかと言う考えが出てきました。
今まで個々の大学と共同研究等をやってきましたが、更に組織的に研究開発を強化するにはどうしたらいいかということを考えましたときに、オープンイノベーションの一環として、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)をコカ・コーラウエストグループで設立しようということになったわけです。加えて、キューサイだけでなく飲料事業の方でも今後構造改革を推進する中で、外部の技術・ノウハウを導入した方が効率的で、且つ協業が見込める事業も投資領域に入れました。
先日プレスリリースしましたように投資領域はヘルスケア・スキンケア、バイオ、ライフサイエンス、とキューサイがケールという野菜を栽培していることからアグリ分野を対象としています。それから環境分野です。環境と言うのはどちらかと言うと飲料事業に繋がりやすいところがあると思いますが、なかなか単独で開発することは難しい分野です。例えば、ペットボトル。容器の分野では、ビンから缶そしてペットボトルにイノベーションが起こってきました。我々はその変化に戦略の変更を余儀なくされてきたという面がありましたが、逆に環境負荷の軽減に繋がるイノベーションに早い段階でアクセスすることが出来れば大きなメリットになると考えています。
また、キューサイもコカ・コーラの方も流通業の面がありますのでITは避けて通れません。流通の効率化に繋がるようなITベンチャーにアクセスできればいいなと思っています。特に、キューサイ製品の販売はテレビ通販がメインですが、ECがどんどんシェアを増やしています。このECでアドバンテージを持つためには、ECに変革を起こすような技術を持ったベンチャーと組むことも必要だと思います。
Q:今後、そういったベンチャー企業をどのように、見つけてくるのでしょうか?
S:福岡だけでは情報が入りにくいということがありますので、ユーグレナSMBC日興リバネスキャピタルが運営するリアルテックファンドにLP出資しました。彼らは、特に大学・研究機関等アカデミアとの強固なネットワークを保持していることから、研究開発型ベンチャーに特化した投資案件の情報取集能力が高く、その情報を我々にも共有させてもらっています。また、いろいろなベンチャーコミュニティーともお付合いさせてもらっており、東京でのピッチコンテストなどにも参加してソーシングしています。
Q:投資を検討する上で重要視することは?
S:我々はCVCですので、我々の事業と中・長期的にシナジーがあるか否か、と言うのが基本的な基準です。ただ、我々としてもベンチャー企業とタイアップやコラボなどの経験が少ないため、ベンチャー企業とのタイアップの仕方などをいかに社内で根付かせるかと言うところに課題を感じています。
Q:協業のシナジーが生まれる可能性があるベンチャーにマイナーの出資をするイメージですか?
S:20%以下で出資する形を予定しています。これまでM&Aの目的のためにソーシングしてきましたが、この場合中堅以上が対象になり、多くの候補が探せるわけではありません。
多くのベンチャー企業と出会い、初期段階から関与した方が、長期的に双方にとってメリットがあると考えています。
Q:そういう意味では、シード、早い段階から投資していくということでしょうか?
S:キューサイで言えば、開発の方で中・長期的なシナジーが見出せればと言うことになると思います。開発部隊の補完ができるようなベンチャーと出会えればと思っています。
支援に関していえば、我々は、販売市場へのアクセスをベンチャー企業に提供できますし、その他にも、グループのリソースを活かした支援が出来たらと考えています。
Q:投資のサイズはいくらぐらいを想定していますか?
S:我々の投資総額は13億円です。そのうち、3億円はリアルテックファンドに出資しております。残り10億円を直接ベンチャーに出資しようと考えています。1件当たり5千万円が平均としますと、20社ぐらいへの投資が想定されます。6年ぐらいで投資して、以降は協業の強化及び回収を行う予定です。