ホープ(福岡)がマザーズ上場承認 ~福岡のStartupの成功事例としてロールモデルになれるか~

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ホープ(福岡、代表取締役 時津孝康)が2016年5月13日東京証券取引所マザーズ、福岡証券取引所Q-Boardから上場承認された。ホープは2005年に現在の事業を創業し、自治体の持つメディアの空きスペースなどに有料広告枠を設け、掲載料の一部を自治体の歳入に充てる・歳出削減等を行う事業を展開している。最近は、自治体の発行する広報紙やホームページの新着情報を閲覧できるアプリi広報紙をリリースするなど積極的な事業展開を行っている。

2013年8月にグロービス・キャピタル・パートナーズ(以下「グロービス))に第三者割当増資を実施、1億5千万円を調達している。

最近では珍しくはなくなったが、当時は1億円を超える資金調達はまだめずらしく、また独立系のグロービスの九州投資案件としても注目された。創業者の時津氏は、東京のVCから投資を受けて、全国展開するという段階になっても、あくまで本社を福岡に置き続けた。当時あるフォーラムで「福岡を愛していて、特に東京に憧れもないし、福岡やっていきたいと思っている。」「福岡は採用がしやすいし、ノリが良い。人とのつながりが独特。」といった福岡にこだわる理由を述べている。

 

(参考:G1地域会議 九州・沖縄 https://www.youtube.com/watch?v=mru13TEO8Fw

 

今回のIPOの概況を確認しておこう。

主幹事はみずほ証券、監査法人はトーマツが務めている。直前期の業績(2015年6月期)は、売上高1,142百万円、経常利益71百万円、当期純利益24百万円、純資産224百万円。発行済株式数は1,234千株、公募株数は110千株、売出株数は158千株となっている。想定株価(1,400円)で計算すると。プレの時価総額は17億、資金調達は1.5億円、売出総額は221百万円が見込まれる。

 

今回のホープのマザーズ上場が地域のStartupエコシステムに与える影響について考えてみたい。

福岡は「グローバル創業・雇用創出特区」になったこともあり、全国的に注目されているが、残念ながら、全国に通用するようなイノベーティブなベンチャー企業が株式公開する事例が少なかった。過去において、デコメで成長したアイフリークや通販事業のジモスなどが上場した例があるが、東京に拠点を移したり、M&Aで親会社がころころと変わったりと、地元から成長して存在感を持ち続けている事例が少なかった。未上場企業で世界的な企業となっているレベルファイブなどがあるが、株式を公開はしていない。

 

また、今回はVCとしてグロービスが入っていることにも注目したい。

本格的なハンズオンを行うVCと言っている通り、社外取締役にはグリーなどを経てIT分野にも強い東明宏氏が入っていた。VCから投資を受けることで、資金だけではなく、そのネットワークや成長ノウハウを利用することが出来る。株式上場を目指すことで、コーポレート・ガバナンス体制や内部統制の整備が進み、成長とリスク管理の両立も行えるようになる。ある意味大人の会社になっていくプロセスということもできるだろう。今後は証券市場の投資家の期待に応えていかなければならないが、社会的信用を得て、行政分野のビジネスはさらに進めやすくなるだろうし、人材の採用にもプラスになるのは間違いない。

 

Startupの成長のために必ずしもVCからの投資やIPOは必要ではないかもしれない。

一方、事業の急速な成長のためにはエクイティファイナンスは大きな武器となりえるし、専門家の協力を得やすくなる。また、エクイティファイナンスを通じて多くの関係者が、その経験とキャピタルゲインを得ることで次の起業家にそのリソースを渡していくことが、その地域のエコシステムの強化には欠かせない。また、身近な成功者が現れることで、「なにくそ、自分たちだって」と競争心を煽る効果がさらなる成功を生んでいくだろう。

世界的には小さなIPOの規模かもしれないが、上場企業という信用を得るホープの今後の更なる成長と、地域のエコシステムに与えるプラスの影響は非常に大きなものになるに違いない。

written by K

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