福岡・九州のStartupが資金調達ラッシュ。スタートアップ都市は本物になるか?

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スタートアップ都市として注目が集まる福岡でStartupがベンチャーキャピタルから資金調達する事例が増えている。「グローバル創業・雇用創出特区」となって以来、実際に創業が増えている状況ではあったが、ここにきて資金調達を成功させるStartupが増加している。今後、一気に事業を拡大するStartupも現れそうだ。

 

最近の億円越えの調達状況

 

アウトドア向け地図アプリ「YAMAP」を展開するセフリが、コロプラ等を割当先とする1.7億円の第三者割当増資を実施。昨年のB DASH CAMPで優勝するなど、さまざまなコンテストで賞を獲得してきたセフリであるが、大型の資金の調達に成功した。

 

IoT系スタートアップのスカイディスクは、ニッセイ・キャピタル、アーキタイプベンチャーズ、ドーガンが運営するファンドを引受先とした第三者割当増資を実施。総額1億円を調達した。

 

九州大学発ベンチャーで有機EL発光材料を開発するKyuluxは、産学連携機構九州、QBキャピタルをはじめ、ユーグレナSMBC日興リバネスキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル他のベンチャーキャピタル、事業会社等に加え、国立研究開発法人科学技術振興機構からの出資を含む総額15億円の資金調達を2月末に実施した。

 

アーリーステージでは?

 

アーリーステージでの資金調達も活発だ。レンタルピットネットワークサービス「ゴーゴーガレージ」を展開するインプルーブは、ドーガン、ベンチャーユナイテッドがそれぞれ運営するファンドを割当先とする第三者割当増資を昨年末に実施している。

 

同じくドーガンとベンチャーユナイテッドから、釣果を共有する「ツリバカメラ」を運営するウミーベが昨年資金調達を行っている。

 

鹿児島のウェブ・アプリ開発企業ユニマルは、1月に宮崎太陽キャピタルを引受先とする第三者割当増資を実施した。いずれも金額は非公表であるが数千万円規模の調達を行っていると思われる。

 

過去の福岡の調達状況のおさらい

 

福岡に拠点を置くStartupで、現在までにベンチャーキャピタルから資金を調達している主な事例としては次のような企業がある。

 

家具のEコマース「ロウヤ」を運営しているベガコーポレーションは、2011年にジャフコから第三者割当増資で10億円を調達。

 

自治体向けに広告事業を展開するホープは、2013年にグロービスキャピタル・パートナーズから第三者割当増資で1億5千万円を調達。

 

モバイルソリューションサービスを展開するアイキューブドシステムズは、2014年にジャフコから第三者割当増資で3億円を調達。

 

クラウドプラットフォームを提供するグルーヴノーツはドーガン、NECキャピタルソリューションなどから資金調達。

 

レンタカーの予約・検索サービスを展開するリーボは、ドーガン、大和企業投資と佐銀キャピタル&コンサルティングから第三者割当増資で資金を調達。

 

ゲーム開発を手掛けるグッドラックスリーは、2013年12月にドーガン、赤池敦史氏、植木一夫氏をはじめとする個人投資家を割当先とする第三者割当増資を実施し、総額1億3,050万円を調達し、昨年9月には株式会社佐銀キャピタル&コンサルティング、大分ベンチャーキャピタル株式会社、ひびしんキャピタル株式会社、・ギャザリング株式会社から第三者割当増資で1億円を調達。

 

すでに拠点を東京に移しているが福岡で創業したファッション系ECサイト誘客サービスを展開するニューワールドは、昨年5月にサイバーエージェント・ベンチャーズから第三者割当増資で1千万円を調達している。

 

ベンチャーキャピタルの顔ぶれ

 

増資を引き受けているベンチャーキャピタルの顔ぶれを見ると、福岡に拠点のない東京のベンチャーキャピタルも積極的に増資を引き受けており、資金の出し手がVCに限らずCVCを含む事業会社、エンジェルも出資するなど多様になっていることが見て取れる。

ハンズオンを行うには距離のハンデがあると言われてきたが、東京のベンチャーキャピタルも、福岡であれば、空港も近く、その後のハンズオンも可能と判断しているのだろう。ベンチャーユナイテッドのように地元のベンチャーキャピタルであるドーガンと共同で投資することで、ファインディングやモニタリングを効率的に行うという形態も出てきている。

東京のベンチャーキャピタルとしては、福岡が今後も有望なStartupが現れる地域になることを期待しての投資という側面もあるだろう。

 

 

Startupがベンチャーキャピタルからの資金を調達することで、チーム構成を整え、経営アドバイスやネットワークの紹介を受けることができ、成長が加速することが期待される。ベンチャーキャピタルからの資金調達に成功するStartupが増えているということは、福岡にも一定のレベル以上のStartupが存在することの証左でもある。今年は、現在資金調達に成功しているStartupに加え、ここ一年ほどで起業したStartupも続々とサービスをローンチしはじめており、今後もVCからの調達に成功するStartupが増えていくことが期待される。

 

エコシステム構築へとつながるExitへの期待

 

この状況をさらに勢いづかせ好循環させるには、ロールモデルとなるようなStartupが、IPOやM&Aでエグジットを成功させることが期待される。昨年は宮崎県のアラタナがスタートトゥデイに株式交換により時価総額30億円で買収されるという事例もでてきている。「福岡にエコシステムを作り上げるためには、あとは成功事例がでることだけだ」と長く福岡でベンチャー支援に関わる関係者が言うように、福岡を代表するStartupが生まれ、その成功(または失敗も)の糧を地域でシェアすることで本当のスタートアップ都市が実現するのではないだろうか。シリコンバレーでも身近にいた起業家が成功することで「あいつができるなら俺だって」といった意識がさらなる挑戦者を増やすことに繋がっているという。

さらに、シリコンバレーのように成功した起業家がその資金と経験とネットワークを次の起業家に注ぎ込むことで、エコシステムが創出されるであろう。

東京に比べればまだまだシード期に支援するエンジェルやシードアクセラレーターがいない、ベンチャーキャピタルが少ない、優秀な人材の確保が難しい、有力な連携先が見つからないといった課題はあるかもしれないが、本物のスタートアップ都市の実現に向け、資金調達に成功したStartupが、事業でしっかりと実績を出していくことに期待したい。

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